揺らぐ日米同盟

連立優先で「普天間」先送り
鳩山政権 アフガン対テロ支援からも脱落

揺らぐ日米関係


 「日米関係は世界で最も重要な2国間関係である」。マンスフィールド駐日米大使(当時)がそう力説してから四半世紀が過ぎた。現在、米国では「90年代の貿易戦争以降で、最も対立的な関係」(ニューヨーク・タイムズ11月12日付)などと、日米関係が危機的状況にあるとの見方が広がっている。


 これは、鳩山政権が、内政だけでなく外交・安全保障の分野でも政策の新機軸を打ち出そうとしているためである。
 しかし、日本が、オバマ米大統領が全力を挙げるアフガニスタンでの対テロ作戦支援から“脱落”することは、明らかに間違った選択である。インド洋では、各国がテロ組織の武器、弾薬や資金源の麻薬などの海上輸送を阻止するため、海上阻止活動を展開している。それを下支えしてきたのが海上自衛隊による補給支援活動だ。
 鳩山政権は、各国首脳から再三、継続を要請されたにもかかわらず、来年1月の中止を表明。代わりに5年間で総額50億ドルの支援を表明したが、“小切手外交”の復活であり、アフガニスタン復興や対テロ作戦での日本の存在感の低下は否定できない。


 さらに、オバマ政権に衝撃を与えたのは、2006年に最終合意していた沖縄・普天間飛行場の移設問題だ。岡田外相や北沢防衛相の発言は、連日揺れ動き、鳩山首相オバマ大統領に「私を信じてほしい」と言明しておきながら、迷走を続けた揚げ句、結論を来年に先送りしてしまった。県外・海外移設を強硬に主張する社民党との連立を重視したためである。
 首相は「日米同盟が基軸」「(オバマ大統領との会談は)日米関係の重層的な深化を果たしていく良い機会」といいながら、普天間移設問題では米国政府を納得させる展望を示すことはできなかった。 


米中緊密化の影響


 これまでも、日米安保体制は、強化や希薄化を繰り返してきた。今回の混乱が政権交代に伴う一時的なものだと思いたいが、中国の台頭による米中時代の到来や米国の軍事戦略の見直しなど、構造的な変化の兆しも注視するべきだろう。
 米国にとって、中国は今や日本を抜いて、世界一の米国債保有国であり、魅力ある巨大市場でもある。米中の関係強化に対応して、日米安保体制がどのような影響を受けるのか、政府は十分、検討を重ねるべきだろう。
 また、9・11同時テロ後、世界に広がるテロ組織との戦いは米国の重要課題になった。イラクアフガニスタンでは、国連決議を受けて多数の国が米軍と協力している。日米安保体制が基地の提供を軸とする2国間の関係にとどまらず、アジアや国際社会の公共財としての役割に期待する声が高まる可能性もある。
 アジアや世界の変化に対応して、日米同盟を深化させていかなければならない。
(公明新聞:12月23日)