成長戦略なき鳩山政権の罪

企業襲うデフレ、円高、株安の三重苦

景気の二番底懸念


 国内景気が二番底を打つ懸念が出てきた。当面の景気下支えはもちろん、自律的な経済回復に向けても、政府は早急に実効性ある政策を打ち出すべきである。怠慢はもはや許されない。


 景気の減速は、経済指標にはっきりと出ている。


 日銀が発表した12月分の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の業況判断指数は「悪い」が「良い」を24ポイント上回った。回復のペースも鈍化しており、その水準はリーマン・ショック後の昨年12月調査時と同程度にとどまっている。


 しかも、デフレと円高、株安の“三重苦”で、改善のペースは今後さらに鈍るとみられる。企業は設備投資をますます控えるようになろう。実際、短観によると、大企業製造業ベースの今年度設備投資計画は前年度を3割も下回っている。過去最悪の落ち込みだ。


 今年7〜9月期の実質国内総生産(GDP)もこのほど、1次速報値の前期比年率4.8%から1.3%に大幅下方修正された。景気回復の足取りが急速に弱まっていることを実感しないわけにはいかない。


 国民生活にも深刻な影響が出始めている。


 厚生労働省の調査によると、今年、平均賃金の引き下げに踏み切った企業の割合は12.9%にも上る。調査を開始した1999年以降で最悪の数字だ。大手企業の今年の冬のボーナスも、平均15%減と過去最大の減少率だった。


 何より気掛かりなのは、雇用への影響だ。特に、公明党の強力な推進で拡充されてきた融資保証などで、これまで何とか従業員を維持してきた中小企業が、賃金引き下げでは持たず人員削減に踏み切ることになれば、失業率はさらに悪化し、日本経済は完全に冷え込んでしまう。短観でひときわ厳しい業況感を示している中小企業への経営支援を急がねばならない。


本末転倒の経済政策


 業種別に見ると、不況風をまともに受けているのが製造業だ。ところが、このほど発表された鳩山政権の来年度予算編成の基本方針や、先に決めた今年度第2次補正予算案(緊急経済対策)は、経済動向を完全に読み間違ったのか、この点に全く目が向いていない。嫌気をさした企業が今後、なだれを打って中国や東アジアに走り、産業の空洞化が加速する恐れがある。


 景気悪化と物価下落が企業活動を縮小させ、それが賃金引き下げや雇用調整に跳ね返るという悪循環を断ち切るには、中長期の成長戦略が絶対的に欠かせない。予算編成にしても、初めに成長戦略があってこそ効果が期待できるというものだ。


 鳩山政権の経済政策は、順序が転倒していると言わざるを得ない。


 海外に目を向ければ、中国はリーマン・ショックから早々に立ち直り、米国も回復基調を取り戻しつつある。鳩山政権の下、日本だけが“独り負け”という最悪のシナリオが現実味を帯びてきた。
(公明新聞:12月24日)