露呈した「先見性のなさ」

重大な公約違反 国民に説明尽くせ

税制改正大綱


 政府が鳩山政権で初めて閣議決定した2010年度税制改正大綱は、民主党の「先見性のなさ」を見事に露呈したものとなった。


 民主党が先の衆院選マニフェストに掲げた目玉政策の撤回を余儀なくされたからだ。


 民主党マニフェストの中で「ガソリン税などの暫定税率は廃止し、生活コストを引き下げます」と明記していたが、税制改正大綱では厳しい財政状況を踏まえ、暫定税率は新たな租税特別措置(租特)に衣替えすることになり、現行の税率が維持されることになった。


 明らかなマニフェスト違反である。


 民主党マニフェストの政策について、「政権をとればできる。ムダ遣いをなくせば十分財源は生まれる」(鳩山由紀夫代表=現首相)などと豪語してきた。鳩山政権が財源不足を理由にして「国民との契約」を“破棄”したのは、お粗末としか言いようがない。


 鳩山政権はマニフェスト違反に至った経過や根拠などについて、国民に対して丁寧な説明を尽くすべきだ。


 重大な公約違反は、これだけではない。


 税制改正大綱では、扶養控除のうち16歳未満分を廃止、16歳から22歳までの扶養家族を対象とする特定扶養控除の高校生分を縮小した。


 マニフェストでは、「所得税配偶者控除・扶養控除を廃止し、『子ども手当』を創設」と明記し、住民税には触れていなかった。その上、住民税の扶養控除は「見直しの対象とせず、現状のままとする」と説明していた。特定扶養控除についてはマニフェストで「存続させる」としていた。


 住民税の扶養控除が廃止されれば、住民税を基準として決められる社会保険料などが連動して引き上げられる場合があり、雪だるま式に負担が増える可能性がある。


 また、特定扶養控除の高校生分が廃止されれば、19歳未満の働いていない子どもを扶養する家庭は、高校授業料無償化の恩恵も受けられず、単なる実質増税だけになる。


 こうしたケースについて、政府は負担を軽減する具体的な対策を講じるべきだ。


全体では1兆円増税


 今回の税制改正は全体では1兆円規模の増税となり、デフレや雇用への不安が増す中、「経済対策の視点を欠いた戦略なき税制改正」(石井啓一公明党税制調査会長)に終わった。


 経済対策がエコカー減税の継続などにとどまり、目新しさに欠けたことは、鳩山政権に確たる経済成長戦略がない実態を如実に示している。


 公明党は今回の税制改正に対し、(1)景気刺激に資する税制、将来にわたり日本の成長を促す税制(2)格差の是正と所得再配分機能の強化――などを政府に提言していたが、次期通常国会ではこうした観点から政府の問題点を突いていきたい。
(公明新聞:12月25日)